碧柘榴庵

-aozakuro an- ロックと映画と猫を愛する文字書きのブログです。

斯く「書く」然々(かくかくしかじか)。

  三ヶ月半ぶりに“カルロヴィ・ヴァリの殺人”という、中編小説の連載を始めた。

 前作、37万文字超の長編をおよそ一年かけて書きあげてからというもの、ずっと呆けたように怠惰な毎日を過ごしていた。書いている最中にもあった、アウトプット作業ばかりしていた所為でからっぽになった、あの感じではあったのだが、今度はからっぽなのにも拘わらず、頭の中いっぱいに充満させていたロンドンや寮制学校の世界に捕らえられたままのようになってしまっていたのだ。

 小説を書くとき、頭の中にはずっと映像が流れている。それを私は必死になって文章にして書き写す、そういうやり方をしている。書き始める前にはその映像におかしなところが出てこないよう、キャラたちがそこで活き活きと動くように、 Google 先生を駆使して必要な情報を集め頭の中に叩き込む。単純に好きという理由でイギリスや中東欧あたりを舞台にすることがほとんどなので、たとえばその国、その街の名所や美味しいもの、地理、主要な交通機関や路線図、気候、近年あった出来事などを調べ、画像を集め、あれば動画も視て、ストリートビューで散歩してその空気を頭の中に充満させる。殆どの場合、日本語のページだけでは充分とはいえないのでその国の言語に訳した単語で検索をかけ、みつけたページをまた翻訳にかけて読んだりもする。

  その作業をしているときはとても楽しい。まあ趣味でやっていることなのだから楽しいのは当たり前なのだが、去年の十月末に“ THE LAST TIME ”を書きあげてからはほとほと参ってしまった。いつまで経っても頭の中から『世界』が抜けていかなくて、新しいことに手を着けられない。次作が書けないというだけの話ではない。本を読む気も起きず、出かける気も起きず(もともと出不精ではあるが)。毎日ぼけーーっとPCに向かって座り、ニュースを読んだり猫動画を視たりと、どうしてもやらないわけにはいかない家事などで動く以外はひたすらだらだら。こらあかん、と思い Fire TV Stick を買って、時間の許す限り映画を視た。別のものを入れて薄めて、切り替える作戦である。が、ただ「映画はやっぱりいいなあ、好きだなあ」「ステイサム愛してるー」「トム・クルーズ頭おかしいー( 注① 褒め言葉 / 注② 私は高所恐怖症)」と再認識しただけで、あまり状態は変わらなかった。

 そこから回復したのは、ある文字書き仲間の旧い友人のおかげである。私の書いた趣味全開チラ裏小説を読んでくれて、感想までくれて、大好きな猫やミステリの話をしているうちにまた気力が沸いてきたのだ。同じ趣味を持つ友人というのは本当にありがたい存在である。

 実は“カルロヴィ・ヴァリの殺人”を書き始める前、もうひとつ練っていたアイデアがあった。が、それは無理遣り捻りだしたというか、うーんと懸命になにもないところから考えたものだった所為か、プロットの段階からちっとも捗らなかった。そこへ、いきなり降って沸いたように別のアイデアが浮かんだのだ。おぉ!? とまるで突然空から落ちてきたようなそれをキャッチしてから、結構詳細なところまで練ったプロットができあがるまでにたった一時間ほどしかかからなかった。以前短編を書いたときにもあったけれど、こういうときは不思議なくらいさくさくと筆が進む。
 そうしてほぼ書きあがりつつある“カルロヴィ・ヴァリの殺人”は、初めに予想したとおり中編程度の長さで終わりそうだ。四章に分け、とりあえず一章目のみ投稿サイトにアップして、連載というかたちで公開を始めた。殺人という言葉がタイトルについてはいるが、残念ながらミステリと呼べるほどの代物ではない。好きなので、いつか書けたらいいなあと思うのだけど。

 

※ もしも「よっしゃ、いっちょどんなんや読んでみたろ」とか思ってくれた方がいらっしゃいましたら、こちらからどうぞ(いちおうBLですが)。